【2024年版】労災保険とは?企業担当者がおさえておきたい基本事項

【2024年版】労災保険とは?企業担当者がおさえておきたい基本事項

企業で働く上で一度は耳にするであろう労災、そして労災保険という言葉。
これはいざという時に従業員の生活を守る非常に大切な制度です。
この記事では、労災保険とは何か、その種類や申請方法について解説します。ぜひ参考にしてみてください。

【目次】
  • 業務災害
  • 通勤災害
  • 特別加入について
  • 療養(補償)給付
  • 休業(補償)給付
  • 傷病(補償)給付
  • 障害(補償)給付
  • 遺族(補償)給付
  • 葬祭給付
  • 介護補償給付
  • 二次健康診断等給付
  • 仕事でのけが等に健康保険を使ってしまったら

まとめ

労災とは

労災とは、労働災害の略(以後労災と呼ぶ)で、労働者が業務遂行中に業務に起因して受けた業務上の災害のことで、業務上の負傷、業務上の疾病及び 死亡をいいます。


労災保険について

そして労災保険とは、労災によって負傷疾病・した労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。雇用保険と合わせて「労働保険」と言われることもあります。

労災保険は二種類に分けられます。

業務災害

労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。
業務上の災害であることを判断する際、以下の要件が重要であり、この2つ共に当てはまらなければなりません。

業務遂行性 

契約のもと労働者として雇われている状態、事業主の支配下にある状態での災害であること

業務起因性 

業務遂行性が認められる状況において発生した災害であり、業務を原因とするものであること

通勤災害

労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡を言います。


労災保険加入の条件

では、労災保険に加入するためには何か条件があるのでしょうか。

労災保険は正社員、パート・アルバイトに関わらず、すべての従業員が加入対象となります。
つまり事業主は※一人でも従業員を雇っていればかならず労災保険の加入手続きをしなければならず、違反すると懲役や罰金に処される恐れもありますので注意しましょう。

※5人未満の労働者を使用する個人経営の農林水産の事業を除く

特別加入について

労災保険は雇われる側である従業員の為の保険ですので、例えば事業主や役員などは対象外ですが、特別加入といって、条件を満たせば加入することができます。
加入対象は以下の4種類です。

  •  中小事業主等(第1種特別加入)
  •  一人親方その他の自営業者(第2種特別加入)
  •  特定作業従事者(第2種特別加入)
  •  海外派遣者 (第3種特別加入)

労災保険の保険料について

保険料は全額会社負担です。
業種によって保険料率は異なります。

※令和6年度より労災保険料率が一部変更となりました。

労災保険料の計算式は以下の通りです。
 労災保険料 = 「労働者の賃金総額」×「労災保険料率(労災保険率+雇用保険率)」

参考記事:【社労士に聞く】社会保険料の計算方法や金額、種類まで基本情報から分かりやすく解説!

給付の種類

給付には様々な種類があります。ここでは各給付の内容や要件について説明します。

療養(補償)給付

労働者が、業務または通勤が原因で負傷したり、 病気にかかって療養を必要とするときに支給されます。
給付には以下の2つがあります。

療養の給付

労災病院や労災保険指定医療機関・薬局等の指定医療機関等で、無料で治療や薬剤の支給などを受けられる(現物給付)

療養の費用の支給

指定医療機関等以外の 医療機関や薬局等で療養を受けた場合に、その療養にかかった費用を支給する(現金給付)

休業(補償)給付

休業(補償)給付は、労働者が労働災害の療養のために休業し、賃金を受けることができない場合に支給されます。

傷病(補償)等年金

業務または通勤が原因となった負傷や疾病の 療養開始後1年6か月を経過した日またはその 日以後、要件に該当する支給されます。要件は以下の通りです。

  • その負傷または疾病が治っていないこと
  • その負傷または疾病による障害の程度が傷病等級(第一級~第三級)に該当すること

障害(補償)等給付

業務または通勤が原因となった負傷や疾病が治っ たとき、身体に一定の障害が残った場合に以下のものが支給されます。

  • 障害等級第1級~第7級の場合:障害(補償)等年金、障害特別支給金、障害特別年金
  • 第8級~第14級の場合:障害(補償)等一時金、障害特別支給金、障害特別一時金

遺族(補償)等給付

業務または通勤が原因で亡くなった労働者の遺族に 対し、遺族数に応じて遺族 (補償)等年金、遺族特別支給金、遺族特別年金が支給されます。

葬祭給付

葬祭を行った者に対し、315,000円+給付基礎日額の30日分、または給付基礎日額の60日分のどちらか高い方が支給されます。

介護(補償)等給付

障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金 の受給者のうち、障害等級・傷病等級が第1級の方 (すべて)と第2級の「精神神経・胸腹部臓器の 障害」を有している方が、現に介護を受けている 場合に支給されます。

二次健康診断等給付

二次健康診断等給付は、職場の定期健康診断等(一次健康診断)で異常の所見が認められた場合に、脳血管・心臓の状態を把握するための二次健康診断及び脳・心臓疾患の発症の予防を図るための特定保健指導を1年度内に1回、無料で受診することができる制度です。
給付の要件は以下の通りです。

  • 一次健康診断の結果、異常の所見が認められること
  • 脳・心臓疾患の症状を有していないこと
  • 労災保険の特別加入者でないこと(特別加入者の健康診断の受診は自主性に任されているため)

出典:厚生労働省「労働基準情報:労災補償」「労災保険二次健康診断等給付」

労災保険と健康保険

これまでお話してきた通り、業務または通勤中の負傷や、業務が原因となる疾病には労働保険が適用されます。
日頃病院にて治療を受けるとき、受付で保険証を提示し、健康保険を利用する、ということを自然におこなっていることでしょう。しかし労災保険の給付対象となる負傷や疾病には、健康保険を利用することはできないのです。

労災保険と健康保険では、その対象や目的が異なります。

労災保険

労災保険は労働基準監督署の管轄であり、労働者災害補償保険法にもとづいて必要な調査をおこなった上で、労働災害に対して保険給付を行います。

健康保険

一方の健康保険は、健康保険組合や協会けんぽが、健康保険法にもとづいて、業務外での怪我、疾病・休業・出産・死亡に対し、医療給付や手当金の支給を行います。

労災保険は、健康保険(あるいは国民健康保険)と比べると手厚い補償を受けることができます。

仕事でのけが等に健康保険を使ってしまったら

ではもしも従業員が労災保険の給付対象であるにもかかわらず健康保険を使ってしまった場合、どのように手続きをおこなったらよいのでしょうか。

まずは利用した医療機関へ労災であるのに健康保険を使用してしまった旨を連絡し、健康保険から労災保険へ切り替えることができるか確認しましょう。

切り替えが可能な場合

労災保険の様式第5号または 様式第16号の3の請求書を 受診した病院へ提出します。
支払った自己負担額(3割分)が返還されます。


切り替えができない場合

切り替えができない場合は、以下のような手順が必要です。

  1. 加入している健康保険組合または協会けんぽへ労災保険へ切り替えたい旨を連絡
  2. 医療費返納(健康保険が支払った7割分)の通知と納付書が届いたら金融機関にて支払う
  3. 管轄の労働基準監督署へ、 以下の4点を提出
  • 様式第7号(通勤災害の場合は様式第16号の5
  • 病院にて支払った自己負担(3割分)の領収書
  • 返還した健康保険支払い額(7割分)の領収書
  • 健保(国保)から送付された診療報酬明細書(レセプト)


参照:厚生労働省「2-1健康保険証を使って受診してしまいました。どうしたらよいでしょうか。」

労災保険への切り替えは時間と手間を要する作業となりますので、労務担当者にとって負担となる業務を増やさない為には、従業員には日頃から労災による受診時の注意点として、
労災保険指定医療機関にて治療を受ける、指定外の医療機関の場合保険証は使わない、などを周知しておくのがよいでしょう。


請求書の種類(様式)

労災申請時に提出する請求書・届等は、その目的や内容によって異なる所定様式があります。
以下に主な様式をまとめました。

【主な様式一覧】

詳細、その他様式については、厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)」をご確認ください。


労災の手続きには社労法務システムが便利です

日本シャルフでは、給与計算、社保雇用業務、電子申請などが1つのマスター情報で管理でき、労務管理業務が効率的に行える、社労法務システムを提供しています。

労災保険の特別加入者の管理や、労災申請時の各指定様式の作成・帳票印刷にも対応しています。
社労法務システムで社員情報を一元管理することで、申請書類作成時に個人情報を改めて入力する必要はなく、手続きをよりスムーズに、効率的におこなうことができます。
個人情報からだけでなく、労災発生の原因や状況を登録することで、そちらの登録済データから一覧検索することも可能です。

社労法務システムで社員情報、給与、申請業務、マイナンバーなど一元管理しながら、効率的に労務管理業務を行いませんか?


関連記事:「社労法務システム+Esia-Zero(イージア・ゼロ)とは? 給与計算・社会保険手続きを一元管理できる労務システムを詳しく解説!」

まとめ

労災はいざというときに従業員の生活を守ったり復帰をサポートする大切な制度です。
突然の事故発生時などでも正しく対処できるよう、日頃からその仕組みを理解していざという時に備えましょう。

HR-GET編集部

 HR-Get(エイチアールゲット)は、創業から30年以上にわたり、社会保険労務士の方や、企業の労務ご担当者様向けにシステムを開発・提供・サポートをしている株式会社日本シャルフが運営するWEBメディアです。
「人事、労務、手続き、働き方改革、トラブル」などに関するものをテーマとし、人事・労務に関わるビジネスに日々奮闘する、多忙な経営者や人事・労務の担当者に役立つ情報を提供します。

記事検索

ページの先頭へ