【企業担当者向け】社員の退職手続きはどうする?具体的な手順と必要書類について解説!

【企業担当者向け】社員の退職手続きはどうする?具体的な手順と必要書類について解説!
 従業員が退職する際、社会保険や雇用保険、税金関係など、さまざまな手続きが必要です。

また、期限が定められている手続きも多く、限られた期間内で抜け漏れなく進めなければなりません。
そのため「退職手続きで何をすればよいか分からない」「改めて手続きの手順やスケジュールを把握しておきたい」などと感じる人事労務担当者も多いでしょう。

本記事では、従業員の退職に伴う手続きについて、具体的な手順や必要書類、注意点などを解説します。
(更新日:2024年9月2日 )

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【目次】

退職手続きの主な流れ
退職前の手続きと必要書類
  • 退職の意思確認・退職日決定・退職届の受理
  • 退職手続きの説明
  • 退職証明書の発行(希望された場合)
  • 離職証明書の発行
  • 退職金の支給準備
  • 貸与物の返却
  • 健康保険・厚生年金の手続き
  • 雇用保険の手続き
  • 住民税の手続き
  • 離職票の発行
  • 健康保険被保険者資格喪失確認通知書の発行
  • 受け渡しの漏れがないようチェックする
  • 財形貯蓄をしている退職者には異なる手続きを行う
  • 退職手続きが遅れないよう時間に余裕をもって行う

退職手続きの遅れや必要書類の送付漏れに注意

退職手続きの主な流れ

退職手続きは、主に以下の表の手順で行います。

表から分かるように、退職にあたってはさまざまな手続きや書類を用意しなければなりません。
特に退職後の手続きは期限も短く、発行する書類が多いため、なるべく余裕を持って手続きを進めましょう。
退職前と退職後、それぞれの手続きの詳細は次章で詳しく解説します。

退職前の手続きと必要書類

退職の申し出を受けてから、退職当日までの手続きと必要書類について解説します。

退職の意思確認・退職日決定・退職届の受理

従業員から退職の申し出を受けたら、意思確認のうえ、退職日を決定します。

退職日は、以下の要素を考慮して決定しましょう。

  • 後任者の決定
  • 引き継ぎスケジュール
  • 残っている有給休暇の取得
退職日が決まったら、退職届の記入を従業員に依頼します。
退職金の支給や失業保険の受給に関するタイミングは、退職理由(自己都合・会社都合)によって異なります。
そのため、退職理由を確認し、双方合意のうえで記入してもらいましょう。

退職手続きの説明

退職者に手続きの内容を説明します。その際は、以下の項目について確認・説明をしましょう。

  • 健康保険を任意継続する有無
  • 住民税の支払い方法
  • 退職証明書・離職票の必要可否
  • 退職所得の受給に関する申告書の記入(退職金の支給がある場合)

被保険者期間が2か月以上あれば、健康保険は最長で2年間にわたり任意継続できます。なお、任意継続するには、退職者本人が20日以内に手続きしなくてはなりません。
また、退職後は保険料が全額自己負担になることも併せて説明しましょう。

退職者の住民税は、企業が源泉徴収する「特別徴収」もしくは、個人で支払う「普通徴収」にて支払います。
退職する時期が1〜5月の場合は特別徴収にて支払いますが、6〜12月の場合はどちらかを選択できます。
また、普通徴収を選択した際は、後日通知が届き、自分で納付する必要があることを説明しましょう。

退職証明書の発行(希望された場合)

退職証明書とは、退職した事実を証明するための書類です。
離職票が手元にない状態で社会保険の手続きをするときや、転職先で求められたときに必要になることがあります。
もしも退職者が退職証明書の発行を希望したら、会社は必ず発行しなければなりません。 申請に応じなかった場合は労働基準法第22条により30万円以下の罰金が科されることとなりますので注意しましょう。

離職証明書の発行

離職証明書とは、従業員の離職を証明する書類で、離職票を発行する際に必要です。
離職票は、ハローワークが退職者に対して発行する書類で、失業保険の申請をするときに必要です。
ただし、すでに転職先が決まっていて、従業員が離職票を希望しない場合は、離職証明書の発行は必要ありません。
退職手続きの説明をする際に、退職者へ前もって確認をとっておきましょう。

退職金の支給準備

退職金を支給する際は「退職所得の受給に関する申告書」の提出を従業員から受ける必要があります。
この申告書は、退職金の退職所得控除をする際に必要です。そのため、提出がない場合、源泉徴収額が高くなる可能性があります。
退職者に対して、必ず提出するよう説明しておきましょう。

申請書を受け取ったら、退職金を計算し、就業規則で定めている期間内に支給します。
支払い時期を過ぎてしまうと、遅延損害金が発生するため、なるべく早めに準備しましょう。

貸与物の返却

退職当日までに貸与物の返却を受けます。貸与物は主に下記の通りです。

  • PCや携帯電話などの備品
  • 制服
  • 社員証・名刺
  • 社内・顧客関係書類
  • 健康保険証(扶養者の健康保険証も含む)

備品や制服、社員証など、仕事で使うものについては、退職当日もしくは最終出勤日に回収すると返却漏れがなくて済みます。
なかでも、健康保険証に関しては、退職後の手続きに必要です。
したがって、返却が遅れないよう退職者に伝えておきましょう。
また、退職者本人だけでなく、退職者が扶養している人の保険証も忘れず返却するように伝えておいてください。

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退職後の手続きと必要書類

退職後には、社会保険や税金関係、退職者に対する各種書類の送付など、さまざまな手続きが必要です。

ここでは、退職後の手続きと必要書類について解説します。

健康保険・厚生年金の手続き

「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」を、退職日の翌日から5日以内に、年金事務所または日本年金機構の事務センターに提出します。
その際、退職者本人とその扶養者の健康保険被保険者証を添付しなければなりません。
紛失等によって、回収ができない場合は、資格喪失届に理由を記入するか「被保険者証回収不能届」を添付します。

雇用保険の手続き

退職日の翌日から10日以内に、下記の書類をハローワークへ提出します。後日、ハローワークが離職票を発行します。

  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書

離職票は、退職する方が失業保険の申請や保険料の免除申請などに使うため、早めに手続きしましょう。

住民税の手続き

住民税を企業が給料から天引きする「特別徴収」の場合、退職後に徴収方法を変更します。
手続きにあたっては、退職月の翌月10日までに、「給与支払報告に係る給与所得異動届」を、住所のある市区町村へ提出しなければなりません。

特別徴収では、1年分の住民税を6月〜翌年5月までの期間で住民税を徴収します。
そのため下記のように、退職時期によって徴収の方法が異なります。
退職時期 徴収方法
1〜4月 最後の給料もしくは退職金から残額を一括徴収する
5月 1か月分を通常通り給料から徴収する(残額が5月分のみであるため)
6〜12月 最後の給料か退職金から一括徴収する、もしくは普通徴収に切り替えるかを選択してもらう
参考:総務省「地方税制度」

一括徴収の場合、最終月に支給する給料の手取り金額が、税金の分普段よりも大きく減少する可能性があります。

退職する方が混乱する可能性もあるため、前もって説明しておきましょう。

離職票の発行

離職票は、会社が提出した離職証明書をもとに、ハローワークが交付する書類です。
離職票は、失業保険申請や年金・健康保険の手続き等に必要であるため、会社に届いたら速やかに退職する方へ送付しましょう。

健康保険被保険者資格喪失確認通知書の発行

健康保険被保険者資格喪失届を、年金事務所または日本年金機構の事務センターに提出したら、後日「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」が発行されます。
退職する方が健康保険を切り替える際に必要となるため、会社に届いたら速やかに退職する方へ送付しましょう。

また、退職後における健康保険の加入に関して、従業員から質問を受けた際は、以下を説明します。

任意継続被保険者制度を活用する(退職日翌日~20日)
退職日の翌日から、健康保険の被保険者資格を失い、通常であれば国民健康保険へ切り替えます。
ただし、「任意継続被保険者制度」があり、一定条件を満たしていれば、2年間被保険者資格を継続できます。
一定の条件は以下の通りです。

  • 退職日までに、連続して2か月以上の間、被保険者であったこと
  • 退職日から、20日以内に健保組合へ申請すること

申請に必要な書類は、健保組合の窓口かダウンロードで入手可能です。書類を健保組合へ提出すると、後日保険料の払込票と任意継続制度に関する案内所が届きます。

また、任意継続した際は、今まで会社と折半していた保険料が全額自己負担になることも説明しましょう。

参考:全国健康保険協会「任意継続の加入条件について | よくあるご質問

国民健康保険に加入する(退職日翌日~14日)
任意継続をしない場合は、退職後14日以内に、市役所で国民健康保険に加入申請します。
その際、扶養家族も含め、加入する全員の健康保険資格喪失証明書を提出します。

加入者が本人のみである場合は、離職票や退職証明書など、退職日が分かる書類で代用可能です。
扶養家族がいる場合は、退職日が分かる書類と扶養家族がこれまで使っていた健康保険証のコピーで代用できます。

参考:日本年金機構「国民健康保険等へ切り替えるときの手続き

e-Gov法令検索「国民健康保険法施行規則

被扶養者として健康保険に加入する(退職日翌日~5日)
配偶者や親、子どもなど家族が健康保険に加入している場合、一定の条件を満たせば被扶養者として加入できます。
加入する際は、被保険者の勤め先から必要書類を受け取り、退職日翌日から5日以内に提出しましょう。
被扶養者として加入できれば、退職する方本人の保険料はかかりません。ただし、加入には以下のような条件があります。

  • 年間の収入が130万円未満(向こう1年間の見込み収入)
  • 同居の場合は年間収入が被保険者の半分未満
  • 別居の場合は年間収入が被保険者から送られる仕送りの金額以下
  • 月間の収入が108,333円以下
  • 失業保険を受給している場合、その金額が日額3,611円以下
また、被保険者が自営業で国民健康保険に加入している場合は、被扶養者として加入できません。

参考:日本年金機構日本年金機構「家族を被扶養者にするとき、被扶養者となっている家族に異動があったとき、被扶養者の届出事項に変更があったとき」

源泉徴収票の発行
退職日から1か月以内に、その年の1月1日から退職までに支払った給与をもとに源泉徴収票を発行し、退職する方へ送付します。
退職する方が年内に転職する場合は、その収入と合算して転職先の会社で年末調整が行われます。
そのため、転職先へ源泉徴収票を提出する必要があることを退職する方へ伝えましょう。

年内に再就職しない場合は、年末調整を受けられないため、所得税が納め過ぎになる可能性があります。
納め過ぎた所得税については、翌年確定申告をすることで、還付を受けられる旨を伝えましょう。

参考:e-Gov法令検索「所得税法 (226条第1項)」

退職手続きの注意点

退職手続きは、各種申請や書類の受け渡しなど多くの作業が発生し、それぞれに期限もあります。
ここでは、退職手続きを円滑に進めるための注意点をご紹介します。

受け渡しの漏れがないようチェックする

退職手続きでは、書類の送付や貸与物の返却など、退職する方との間で受け渡しが多くなります。
備品や書類の返却漏れは、後日来社して返却、あるいは郵送と二度手間です。
また、必要書類を渡し忘れると、健康保険や失業保険の申請が遅れ、退職する方に迷惑がかかります。

そこで、受け渡し漏れがないようにチェックリストを用いて管理するとよいでしょう。

下記に、簡易的なチェックリストを作成しました。退職手続きの際にお役立てください。
退職する方から受け取るもの
  • 退職届
  • 退職所得の受給に関する申告書
  • PCや携帯電話、制服などの備品
  • 社内・顧客関係書類
  • 社員証・名刺
  • 健康保険証(扶養者の健康保険証も含む)
退職する方へ渡すもの
退職証明書(希望者のみ)
離職票
源泉徴収票
健康保険被保険者資格喪失確認通知書

財形貯蓄をしている退職者には異なる手続きを行う

退職する方が財形貯蓄制度を利用している場合、異なる手続きが必要になります。
財形貯蓄制度とは、給料の一部を会社が毎月天引きし、提携する金融機関に貯蓄する制度です。
財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄は、一定期間が経過すると課税扱いになります。
そのため、退職日から半年以内に、財形貯蓄の提携先へ「退職等の通知書」を提出しましょう。

また、財形貯蓄制度を転職先で継続するかどうかによっても手続きが異なります。
転職する場合は、退職後2年以内に転職継続の手続きをすれば、転職先で制度を継続できます。
その際、同一の金融機関で続ける場合は「勤務先異動申告書」を、異なる金融機関で続ける場合は「退職等の通知書」を提出しましょう。
2年以内に転職しない場合や、転職先で財形貯蓄を継続しないか制度自体がない場合は、原則として財形貯蓄制度を解約します。
財形貯蓄は、転職先で継続するかどうかによって手続きが異なります。そのため、退職する方の意思を確認し、必要な対応を指示しましょう。

参考:厚生労働省「財形貯蓄制度

退職手続きが遅れないよう時間に余裕をもって行う

退職手続きが遅れると、退職する方にとって以下のようなデメリットがあります。

  • 失業保険の申請が遅れ、受給総額が減少する
  • 健康保険の切り替えが遅れ、保険証を使えない期間が生じる
上記のように、主に社会保険関係の手続きが遅れると、退職する方にとって不利益が生じます。

また、退職金の支払い遅れもトラブルにつながります。自社の就業規則で定められた支払い期日を確実に守りましょう。 こうしたデメリットを防ぐためにも、チェックリストやスケジュール表を作成し、計画的に退職手続きを進めましょう。

退職手続きの遅れや必要書類の送付漏れに注意

本記事で述べてきたように、従業員が退職すると社会保険や雇用保険、税金関係など、さまざまな手続きや書類の受け渡しが必要です。
手続きの遅れや書類の送付漏れがあると、退職する方にとって不利益が生じます。
そのため、退職手続きの手順を正しく把握することはもちろん、スケジュール表やチェックリストを作成して、抜け漏れなく計画的に退職手続きを進めましょう。

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