【2025年施行】育児・介護休業法が改正!従業員のために企業がやるべきことは?

【2025年施行】育児・介護休業法が改正!従業員のために企業がやるべきことは?
2022年4月、改正育児・介護休業法が施行されたことで、企業は、従業員が育児・介護といった家庭生活と仕事をうまく両立できるよう、職場環境の改善や、一部項目が義務化されたことに伴い、法令に則った適切な対応が求められました。

そして2024年5月、新たに育児・介護休業法、及び次世代育成支援対策推進法の一部改正が公布されました。

この記事では、これまでの改正の流れや改正内容、企業に求められる取り組みなどについて解説します。

更新日:2024年9月20日 

【目次】

①制度の周知・休業取得の意向確認(2022年4月1日施行)
②雇用環境の整備(2022年4月1日施行)
③育児休業を取得する要件の緩和(2022年4月1日施行)
④育児休業制度の改正(2022年10月1日施行)
⑤出生時育児休業(2022年10月1日施行)
⑥育児休業の取得状況を公表する義務(2023年4月1日施行)

育児休業取得率と取得期間の推移

改正の概要と趣旨

社労法務システム+Esia-Zero(イージア・ゼロ)について

育児・介護休業法の改正

「育児・介護休業法」は、男女ともに仕事と育児・介護を両立できる職場環境を築く目的で、1991年3月に制定されました。
ところが、育児・介護休業法が制定されてから数十年経過しても尚、国内における育児休業の取得率は、男女で大きな差がある状態でした。

そこで政府は、2021年6月に、男性の育児休業取得を促進させるため、育児・介護休業法を改正し、2022年4月から段階的に施行しました。

以下に施行時期と改正内容をまとめました。

①制度の周知・休業取得の意向確認(2022年4月1日施行)

この法改正によって、育児休業に関する「制度の周知・休業取得の意向確認」が企業に対して義務付けられました。これは、本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た労働者に対して、企業側が育児休業制度の周知や意向確認を行わなければならないというものです。

②雇用環境の整備(2022年4月1日施行)

企業は、労働者が育児休業と出生児育児休業を申請しやすくするために、法令で定められた以下の措置のいずれかを講じなければなりません。

  1. 育児休業に関する研修の実施
  2. 育児休業に関する相談体制の整備
  3. 労働者への育児休業に関する取得事例の収集や提供
  4. 労働者への育児休業に関する制度と方針の周知

育児休業に関する情報の周知に加えて、研修や相談体制の整備、取得事例の提供などを通じて、労働者が育児休業を取得しやすい環境をつくることが求められます。

③育児休業を取得する要件の緩和(2022年4月1日施行)

今回の法改正では、育児休業・育児休業給付を取得するための要件が緩和されました。
改正前と改正後の主な要件を比較すると、以下のようになります。

判断のポイントは「申請があった時点で、契約更新がないことが確実であるか否か」です。企業が「更新しない」と明示していなければ、原則として「更新しないことが確実」とは判断されません。

また、この内容については就業規則の変更が必要です。常時10人以上の労働者がいる場合は、労働基準監督署に変更した旨を届ける必要があります。

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④育児休業制度の改正(2022年10月1日施行)

2022年10月1日から、育児休業制度が大きく変わり、現行の「パパ休暇」は2022年9月30日で廃止されました。

上記の内容についても、就業規則の変更が必要です。

⑤出生時育児休業(2022年10月1日施行)

出生時育児休業は通称「産後パパ育休」と呼ばれる新しい制度です。出生時育児休業の主な特徴は以下のとおりです。

・育児休暇とは別に申請が可能
・取得期間は出生後8週間まで
・取得可能日数は最大4週間(28日)まで(28日を超える場合は、育児休業の扱い)
・分割回数は2回まで

出生時育児休業の制度は、男性の育児休業の取得を促進させるために、育児休業よりも柔軟で取得しやすい仕組みが設けられています。

⑥育児休業の取得状況を公表する義務(2023年4月1日施行)

常時雇用する労働者が1,000人を超える企業は、育児休業の取得状況を年に1回公表することが義務付けられます。
公表する内容には、以下の2つのいずれかが挙げられます。

①男性労働者の育児休業等の取得割合
②育児休業等と育児目的休暇の取得割合

公表する際は、自社ホームページや厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」などで一般公開することが推奨されています。

育児休業等取得の状況を1年に1回公表することが義務付けられるようになったことに伴い、
厚生労働省は「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」(速報値)の結果を公表しましたので、そちらでも詳細を確認することができます。
参照:

育児休業取得率と取得期間の推移

以下の表は、2015年から2021年までの男女別の育児休業取得率の推移です。


男女間では依然として大きな差があるものの、男性の取得率が年々上昇
しているのが見てとれます。

また、厚生労働省によって行われた雇用均等基本調査の集計によると、2015(平成27)年、2018(平成30)年、2021(令和3)年の、男性の育児休業の取得期間は、次のような結果になりました。

2021年、男性の取得率が最も多い期間が、初めて5日未満(25.0%)を上回り5日以上~2週間未満(26.5%)となりました。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」

これらの結果から、制度改正の一定の効果は出ているといえるのではないでしょうか。

【2024年5月公布】育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法が改正

そして、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするための施策として、令和6年5月にも育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法が改正されました。

改正の概要と趣旨

引用:厚生労働省 子ども・子育て 育児・介護休業法について「令和6年改正法の概要」

それぞれの概要の詳細内容は以下のとおりです。

1.子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
  • 3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に対し、柔軟な働き方をするための措置、それらの選択・利用の義務化、当該措置の個別の周知・意向確認の義務化
  • 所定外労働の制限(残業免除)の対象となる労働者の範囲を3歳以上小学校就学前までに拡大
  • 子の看護休暇を子の行事参加等の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生まで拡大、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止
  • 3歳未満の子を育てる労働者に関し、努力義務にテレワークを追加
  • 事業主に対して、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮を義務化

2.育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化

  • 育児休業の取得状況の公表義務の対象拡大(常時雇用する労働者数が300人超の事業主)
  • 事業主に対し育児休業の取得状況等に係る状況把握・数値目標の設定を義務化
  • 次世代育成支援対策推進法の有効期限を10年間延長

3.介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

  • 事業主に対して、両立支援制度等について個別の周知・意向確認の義務化
  • 事業主に対して、労働者等への両立支援制度等に関する早期の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)を義務化
  • 介護休暇について、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止
  • 家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加    

参照:厚生労働省 子ども・子育て 育児・介護休業法について「令和6年改正法の概要」

これらは令和7年4月1日から段階的に施行される予定です。

まとめ

法改正により、従業員誰もが仕事と育児・介護を両立し、自身の子育ての状況に応じてより柔軟な働き方ができるようになることが期待できますが、それを実現するには、企業による環境づくりやサポート、上司や同僚、人事労務担当者の理解など全体の協力が欠かせません。

「他の社員に迷惑がかかる」「育児休暇を取れる雰囲気ではない」などの声を減らすためにも、全体周知や説明、社員の研修を徹底することも重要です。また、休業で欠員が出たときの業務の配分・配置についても、柔軟に対応できるようあらかじめ考えておく必要があります。

当然の権利である育児・介護休業を取得しややすい環境づくりをおこない福利厚生を充実させることは、従業員の満足度向上や定着率向上、ひいては企業のイメージアップにもつながります。

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