【企業担当者向け】36協定とは?知っておきたい基礎知識

 【企業担当者向け】36協定とは?知っておきたい基礎知識
36協定は、働き方改革関連法が施行されることにより、労務管理に大きく影響を与えるといわれています。
そこで今回は、36協定について詳しくご紹介します。
36協定によって社会はどう変化するのか、人事労務担当者として何をするべきなのか、詳しく知りたい方はぜひ参考にしてくださいね。

更新日:2024年1月10日

社労法務システムの紹介

36協定とは?

36協定とは、「時間外・休日労働に関する協定届」のことをいいます。
労働基準法第36条によって、会社は1日8時間・週40時間の法定労働時間を超える時間外労働及び休日勤務などを従業員に命じる際、労働組合などと書面による協定を締結し、労働基準監督署に届出をすることが義務付けられています。

これを、36(さぶろく)協定という名称で呼んでいるのです。

しかし、今までは労使間の合意さえあれば労働時間を上限なしで延長することができてしまうという抜け道がありました。そのような背景から、労働基準法が大きく変わり、時間外労働の上限時間が法的に定められ、⼤企業は2019年4月から施行、中⼩企業は1年猶予され2020年4月から適用となりました。

36協定が生まれたことで、会社はこれまでと比べて厳密な労働時間の管理が求められます。
上限時間を違反してしまうと、罰則が求められることもあるので注意が必要です。

限度時間について

36協定では、時間外労働の限度時間が定められています。

限度時間は「上限なく時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることができない上限を設定することが適当である」と、厚生労働省が労働基準法をもとに上限の時間を定めているのです。
時間外労働の限度時間は、原則として月45時間かつ年360時間です。

一般労働者の限度時間

一般労働者の時間外労働の限度時間は以下の通りです。

  • 1週間:15時間
  • 2週間:27時間
  • 4週間:43時間
  • 1ヶ月:45時間
  • 2ヶ月:81時間
  • 3ヶ月:120時間
  • 1年間:360時間

月45時間の残業という言葉は、皆さんも社内規定や求人票などで目にしたことがあるかもしれません。これは、36協定で時間外労働の限度時間を1ヶ月45時間と定めているためです。

1年単位の変形労働時間制の場合の限度時間

また、変則的な労働時間を取り入れている1年単位の労働時間制の場合は、制限時間が変わり以下のようになります。

  • 1週間:14時間
  • 2週間:25時間
  • 4週間:40時間
  • 1ヶ月:42時間
  • 2ヶ月:75時間
  • 3ヶ月:110時間
  • 1年間:320時間
※対象期間が3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者の場合

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適用猶予の事業・業務

一方で、業務の特殊性や取引慣行の課題から長時間労働が常態化しており上限規制への対応に時間を要するとみられていたため、適用までに5年の猶予期間が設けられていた事業・業務がありました。

自動車の運転業務(運送業)

タクシーやバス、運送トラック、配送業などの自動車の運転業務が当てはまります。
長距離走行をおこなうドライバーは拘束時間が長く、長時間労働が常態化しやすい現状がありました。

建築事業

土木・建築・工作物の建設・改造・修理・解体などの業務がそれにあたります。
また、製造業の中でも、大規模な機械の植え付けや設備も土木・建築等の建設関係の事業も当てはまります。

建築業は高齢化による人材不足、決まった工期を厳守するために長時間労働せざるを得ない業界全体の課題などがあり、猶予期間が設定されていました。

医師

診療に従事する勤務医にもこれまで猶予期間が設けられていましたが、2024年4月以降は条件によって労働者をいくつかの水準に分け、それぞれの規定に沿って適用されることとなります。

水準 長時間労働が必要な理由 年の上限時間
A水準 (臨時的に長時間労働が必要な場合の原則的な基準) 960時間
連携B水準 地域医療の確保のため、派遣先の労働時間を通算すると長時間労働となるため 1,860時間(各院では960時間)
B水準 地域医療の確保のため 1,860時間
C-1水準 臨床研修・専攻医の研修のため 1,860時間
C-2水準 高度な技能の習得のため 1,860時間

参照:いきいき働く医療機関サポートWEB いきサポ

鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業

鹿児島県・沖縄県の甘しゃ糖工場での業務をさします。

季節によって業務の繁閑に大きな差がある点、離島での業務のため人材確保が非常に難しい点などから、猶予適用事業となっていました。

2024年4月より上限規制が適用

これらの事業・業務は2024年3月に猶予期間が終了し、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されることとなります(一部特例つき)。

各事業の改正内容については、以下の記事をご参照ください。

適用除外の事業・業務

上限規制が適用とならない事業・業務もあります。

新商品・新技術の研究開発

研究や開発、試験や製造工程での商品開発・検査、マーケティング・リサーチ・デザインなどの開発、研究の業務、システム・コンピュータ開発なども限度時間の適用外です。

これらは適用猶予事業にも含まれておらず、今後も適用除外のままです。
しかし、今回の法改正によって労働安全衛⽣法が改正され、新技術・新商品等の研究開発 業務については、以下の労働者に対して、医師の⾯接指導が罰則付きで義務付けられました。

  • 1週間当たり40時間を超えて労働した時間が⽉100時間を超えた労働者

事業者は、医師の意⾒をふまえて、必要に応じて勤務状況や労働環境・労働時間等の改善に努めなければなりません。

参考サイト:厚生労働省「時間外労働の上限規制」

違反した場合はどうなる?

36協定で時間外労働の限度時間が45時間までと定められているのに、何らかの理由で一部の従業員の時間外労働が45時間を超えてしまったというケースがあります。

この場合、会社は二度と36協定違反を起こさないように管理方法を改善する必要があるのです。
それでは、36協定に違反した場合の対応を見ていきましょう。

36協定違反時の報告義務

管理方法の改善は会社内で対応すればよいので、36協定違反について会社側から労働基準監督署に報告する義務や制度はありません。
しかし、労働基準監督官や労働局は会社などに対して報告を求めることができます。

この場合は、報告義務が生じるので注意しましょう。

最近では、従業員との未払い残業代トラブルや労災事故が発生した際の労働基準監督署の調査時などで労働基準監督署の調査を受けたとき、36協定違反が発覚し、報告を求められるケースが増えています。

従業員による通報もある

労働基準法では、労働基準法違反について労働基準監督署に申告することができることを労働基準法第104条で定めています。

これにより、会社が36協定違反である残業を従業員にさせていると、従業員から労働基準監督署に通報されるケースも多いのです。この場合、労働基準監督署から調査され、36協定が違反されていることが発覚すると、是正勧告されます。
36協定や特別条項に関わるルール違反は、労働基準法違反として「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑罰が労働基準法32条違反として法律上で定められています。

罰則の対象者

36協定に違反すると、会社だけでなく部門長や工場長など現場で労務管理を担当する責任者も罰則の対象者となります。

企業名公表の制度

労働基準監督署では、毎年労働基準法違反について送検事例を公表しています。

そのため、書類送検されると、企業名が公表される可能性があるのです。
過去に36協定を違反したとして送検されたという事例も公表されているので注意しましょう。

注意点

それでは、36協定を結ぶにあたり、人事労務担当者が注意しておきたい点を見ていきましょう。

健康確保措置を必ず取り決める

36協定のもとで特別条項を定めるには、健康確保措置を取り決める必要があります。

一般的に心臓や脳の病気にかかるリスクは月の残業時間が45時間を超えると高まるとされています。

そのため、36協定では残業が45時間を超える労働時間を課す場合の対応が各会社に義務付けられているのです。
たとえば、産業医の面接指導と勤務間インターバルなど、36協定に記載されている健康確保措置内から取り組みを導入することが求められます。

36協定の内容にかかわらず、会社は働く従業員に対する安全配慮義務を背負っています。長時間労働で従業員の体やメンタルに問題が発生することは、会社にとっても大きなリスクになるでしょう。

健康確保措置はその場しのぎでやみくもに選ぶのではなく、36協定を結ぶ際によく考え、実際に実行することが重要です。
しかし、大掛かりに考えず高い効果が期待でき取り組みやすいものから選択し、協定していきましょう。

時間外労働が上限を超えないように勤怠管理を徹底する

法で定められた時間外労働の上限を超えないようにするには、会社は今まで以上に従業員の勤怠をしっかり管理しなければなりません。

そのためには、現状の従業員の労働時間や勤務状況などを確認する必要があります。
労働時間を管理し、残業が蔓延しないように早めに周知し、時間外労働の上限を超えないような工夫をすることが大切です。

労務管理システムを導入しませんか

日本シャルフの提供する労務管理システム『社労法務システム』は、既存の協定届に加え、今回2024年4月以降の猶予事業の様式にも対応しています。

システムのデータベースに登録している従業員情報から適切な様式で書類作成を行うことが可能となります。

このような労務管理システムを利用することで、煩雑になりがちな業務を効率化することをお勧めしております。

社労法務システムでは、社員情報から社会保険手続き、労災・労使協定、給与計算など、一元で管理することができます。

今回の猶予対象事業のように勤務体系が変則的であったりしても、給与計算に必要な項目を自由にカスタマイズできるので、複雑な計算も可能です。
さらに、オプション機能であるEsia-Zeroを利用すれば、WEB明細への対応も可能となり、従業員はいつでもどこでも給与明細や賞与明細、源泉徴収票を確認することができます。

また、勤怠システム(KING OF TIME/Touch On Time)とのAPI連携も可能となっています。

参考記事:社労法務システム+Esia-Zero(イージア・ゼロ)とは? 給与計算・社会保険手続きを一元管理できる労務システムを詳しく解説!

まとめ

36協定について詳しく知ることができましたか?
従業員たちが働きやすい職場をつくるためには、人事労務担当者が労働時間管理についてしっかり理解することが大切です。
「36協定の知識がないために、知らない間に労働基準法を違反していた」
ということのないよう、36協定の知識をしっかり深めて、正しい労務管理を行っていきましょう。


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HR-GET編集部

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