2025年問題と社労士
2025年問題が話題になっておりますが、2025年問題とは団塊の世代(1947年~1949年生まれ)が75歳(後期高齢者)を迎えることにより、社会にさまざまな影響を及ぼす問題の総称です。
主な問題としては、少子高齢化社会による社会保障費の増大、医療や介護・福祉関係の労働力不足、働き手不足による経済成長の鈍化、などがあります。
総務省統計局が2024年4月12日に公表した2023年10月1日のデータによると、15歳未満の人口は約1417万で割合は11.4%で過去最低となっています。15歳~64歳の人口は約7395万で割合は59.5%。65歳以上の人口は約3623万人で、割合は29.1%で過去最高となっています。75歳以上の人口は約2008万人で、割合は16.1%で過去最高となっています。
これらは、2023年のデータですので、2025年には更に少子高齢化が進んでいるという事になります。
引用:総務省統計局「人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)結果の要約」
2025年問題は何が問題なのか?
社会保障費の増大
まず、我々に与える影響の一つとして社会保障費の負担が挙げられます。社会保障費とは、年金・医療保険・介護保険・生活保護などの社会保障制度によって、国が支出した費用のことです。
団塊の世代が後期高齢者に達することで、医療が必要となる人や、老齢年金の支給開始年齢に達する人が増加します。その為に、国の支出が増えるだけではなく、働き手の社会保障費の負担が更に増加すると考えられています。
医療・介護関係の働き手不足
後期高齢者が増えるということは、それに比例して、医師・看護師・介護士などの医療福祉関係の人材も増やさなければなりませんが、国内では圧倒的な人材不足の為、確保が難しいとされています。
厚生労働省のホームページを見ると、インドネシア、フィリピン、ベトナムから外国人看護師・看護福祉士候補者の受け入れを10年以上前から行っておりますが、必要とされている人数には全く達していない状況です。
また、働き方改革により、2024年度から医師に対しても時間外労働の上限規制が施工されました。そのため、医療体制が更に厳しくなることが予測されます。
企業の高齢化による廃業リスク
超高齢化社会の到来により、企業で働く従業員の平均年齢も高齢化きています。
また、経営者の高齢化により後継者に会社を任せたくても、従業員が高齢だったり、適任がいなかったりと、後継者不足問題があります。
日本ある企業のうち9割以上が中小企業なので、これらの企業の廃業リスクがあることで、そこで働いている雇用の喪失、知識や技術の消失、国力の低下が懸念されています。
2025年問題が企業にどんな影響を与えるのか?
人材不足と採用難
少子高齢化の進行により、労働力不足が叫ばれてから10年以上が経ち、ついに団塊の世代が75歳にまで達しました。それらの子どもである団塊ジュニアは1971年~1974年生まれなので、2025年で51歳~54歳になります。現在の労働人口の中で一番割合が多いのが、この団塊ジュニアであり、そのあとは、多少の前後はありますが、若者になるほど人口が少なくなっていきます。
企業は新卒や中途であっても20代、30代などの若者を欲しがります。特に専門的な知識や技術を身につけなければならないような仕事程、一人前になるのに時間が掛かる為に、若者を欲しがるのです。
有効求人倍率を調べてもらえれば分かると思いますが、ここ10年以上(コロナ時も含めて)有効求人倍率が1より低くなったことは一度もありません。つまりは、求職者よりも求人の数の方が多いことを意味します。
人材不足になればなるほど、採用が困難になり、採用に対する時間やコストがかかるようになるので、企業の負担が大きくなってきます。
高齢者の雇用・再雇用・離職防止
企業として、なかなか新しい人材確保が難しい昨今、少なくとも今いる人材をこれ以上減少させると致命傷になりかねません。そこで、離職防止をするために、業務改善をして残業を減らしたり、福利厚生を充実したり、賃金の見直しをしたりします。
働き手の負担がかかる時期である、育児や介護の時期に育児介護休業を活用してもらったり、職場での環境づくりが必要となってきます。
また、一度60歳や65歳で定年退職した人を再雇用したり、就業規則を見直しして、定年の年齢を引き上げたりします。定年制度は、高年齢者雇用安定法の改訂により、定年退職の年齢の引き上げや、高年齢者の再雇用が求められるようになっており、2021年の改訂では、70歳までの就業機会の確保が努力義務となりました。
参照:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」
これらの課題を解決できる一人が社労士の仕事です。上記で説明したように、企業の課題は山積していますが、経営者の片腕となって、問題に取り組んでいきましょう。
〈作者紹介〉
代表取締役 青木義郎
〇中小企業経営コンサル 〇開業支援コンサル
人材採用と人材教育の表裏一体の人材戦略に力を入れることで経営戦略を軌道に乗せることを得意としている。