社会保険労務士 開業準備に必要なもの⑥報酬(値段)を決める
社労士試験に合格して、いよいよ独立開業をしようとする前に、急いで失敗するよりも事前にしっかりと準備する必要があります。
開業準備には様々なものがあります。資金的なもの、開業手続き的なもの、事務所や備品的なもの、人脈的なもの、営業・マーケティング的なもの、商品・サービス的なもの、メンタル的なもの、などなど実に多くの準備が必要になります。
これらを初期の段階で完璧に準備することは非常に難しい事ですが、意識しておくことが大事になってきます。
報酬(値段)を決める
独立して仕事をとっていくためには、売る為の商品・サービスが必要であり、その値段(報酬)を決めていく必要があります。
実際にその報酬(値段)が適正であるのか?売れるのかどうか?という不安があるかと思いますが、その前にまずは、どうやって世の中の商品やサービスの価格が決まるのかを理解しましょう。
商品・サービスの値段はどうやって決まるのか?
原価計算方式(積算方式)
これは、原価がどれぐらいかかっているのかを計算して、それにプラス利益を追加する方法です。
例えば、かかっている経費が1万円だとして、それに対して自分の人件費と利益を追加して、2万円で売るというやり方です。
社労士で考えると、経費はほとんどなく(あれば別途計上してください)、ほぼ自分の労力である人件費になります。そうなると、これは自分のサービスを労働単価と時間で計算して算出するやりかたになります。
まずは自分の社労士としての目標月給を決めます。例えば、月20日間で60万円稼ぎたいとしたら日給3万円になります。時間で言えば時給3750円です(1日8時間労働と計算します)。就業規則を作成するサービスを作るとして、打合せ2日、ヒアリング3日、作成2日として合計7日間かかったとします。そうなると、1日3万円×7日間で21万円という計算になります。
これは、事前に自分がこの仕事を請け負った場合にはどれぐらいの時間がかかるだろう?どれぐらいの手間がかかるだろう?と想定して計算する必要があるわけなのですが、もちろん仕事に慣れていない初年度では、予想よりも時間がかかることがありますし、予想通りにいかないことも多々あります。ですので、値段は徐々に変更してももちろん問題はありません。初年度に21万円と設定したサービスだったとしても、翌年には25万円など変更もいいのです。
ただ、一度契約したお客様に対して突然値上げしては納得されることが難しいので、普通は次回の新規のお客様から値上げすることが一般的になります。もちろん、ちゃんと説明して納得してもらえれば、従来のお客様に対して値上げしても問題ありません。
市場調査方式(価格調査)
次はマーケティングで言う市場調査をもとに商品やサービスの値段を決めていくやり方です。
例えば、「給与計算代行サービス」を市場調査して(インターネットで検索すればよい)平均的な価格を調べて、それに合わせるというやり方です。
市場価格を知ることは非常に重要で、あまりに高く過ぎるとかあまりに安すぎるという価格設定のミスを無くすことができます。調査することで、同業他社のサービス内容と価格設定を理解することが出来るようになるため、お客様に価格について質問をされても堂々と受け答えることが出来るようになります。
社労士の報酬は原価計算方式と市場調査方式のどちらがいいのか?
それでは、社労士のサービスの報酬を決めていくうえで、原価計算方式と市場調査方式のどちらがいいのでしょうか?
結論から述べますと、初期の段階では市場調査方式を取り、力や経験が付いたら原価計算方式に徐々に切り替えていく方式が良いでしょう。
理由は、原価計算方式は自分が欲しいと思える報酬から逆算して計算をしている為、どうしても市場価格よりも高くなりがちで、新人社労士が市場価格よりも高い報酬を設定しても、市場のサービスよりも満足度の高いものを提供できる確率は低い為に解約率が高くなるからです。(もちろんそれ以前に市場より高い為に仕事を取ることが難しくなります)。
その点、市場調査方式では市場価格と合わせた価格設定にする為に、新人社労士としてサービスの品質が多少劣っていても市場価格とほぼ同じか少し安い設定にすれば仕事も取れますし、解約率が高くなることも防げます。
新人社労士にとっては、まずは市場価格に合わせて(少し安くしてもいい)仕事を受注して仕事に慣れてから、価格を上げていくという流れがスムーズです。
〈作者紹介〉
代表取締役 青木義郎
〇中小企業経営コンサル 〇開業支援コンサル
人材採用と人材教育の表裏一体の人材戦略に力を入れることで経営戦略を軌道に乗せることを得意としている。