労災保険の「特別加入」の対象が広がりました
今までは、国の労災が対象にならなかった職業の方々がいます。
例えばITフリーランスやウーバーイーツの配達員といった職業です。これらの方々は、労働者というよりも事業主という扱いになり、万が一業務中に怪我をしたり、通勤途中で事故に遭っても守られることはありませんでした。
しかし、政府が多様な働き方を推進する中で労災対象となる職業が拡大されております。
今回は、特別加入するにあたって具体的な説明やメリット、デメリットなどご紹介致します。
1.特別加入制度とは
労災保険は、本来、労働者の保護を目的とした制度ですので、事業主、自営業者、家族従事者など労働者ではない者は、保護の対象とはなりません。
しかし、労働者以外の方のうち、業務の実態や、災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めています。それが「特別加入制度」です。
2.特別加入の種類
特別加入できる方の範囲は、次の4種類があります。
- 中小事業主等の特別加入
- 一人親方等の特別加入
- 特定作業従事者の特別加入
- 海外派遣者の特別加入
2-1.中小事業主等の特別加入
労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。
表1:中小事業主等と認められる企業規模
業 種 | 労働者数 |
---|---|
金融業、保険業、不動産業、小売業 | 50人以下 |
卸売業、サービス業 | 100人以下 |
上記以外の業種 | 300人以下 |
2-2.一人親方等の特別加入
一人親方としての加入要件を満たす方が特別加入する場合、「一人親方等の団体」を経由して都道府県労働局長に対して申請書を提出し、承認を受ける必要があります。
2-3.特定作業従事者の特別加入
- 特定農作業従事者
- 指定農業機械作業従事者
- 国又は地方公共団体が実施する訓練従事者
- 家内労働者及びその補助者
- 労働組合等の常勤役員
- 介護作業従事者
- 芸能関係作業従事者 ⇒ 令和3年4月1日から追加
- アニメーション制作作業従事者 ⇒令和3年4月1日から追加
- ITフリーランス ⇒令和3年9月1日から追加
特定作業従事者としての加入要件を満たす方が特別加入する場合、「特定作業従事者の団体」を経由して都道府県労働局長に対して申請書を提出し、承認を受ける必要があります。
2-4.海外派遣者の特別加入
3.特別加入するメリットとデメリット
メリット
特別加入制度により、経営者だけでなく役員や経営者家族も万一の事故に備えられます。
万一の事故により怪我・病気・障害・死亡に至る恐れもあり、その際に経営者自身とその家族を保護する特別加入制度は大きなメリットとなるでしょう。
中小企業の経営者は、労働保険事務組合に事務委託することによって、納付する概算保険料の額にかかわらず、年3回の分割納付をすることができるようになります。
建設業一人親方の場合、労災保険に加入していないと入れない現場があります。そのため、特別加入をすることにより、仕事を受けやすくなります。
デメリット
4.特別加入と民間保険との違い
- 事業主として仕事をしている場合
- ケガをした際に他の労働者がその場に一緒にいなかった場合
- あらかじめ提出する申請書の業務内容と怪我をした原因が、申請書に記載されていない業務だった場合、これらは給付の対象外となります。
他にも相手方に怪我を負わせてしまったなどご自身の怪我以外にもたくさんのリスクが考えられます。
その為、ご自身が加入されている制度の要件をしっかり確認した上で、補填できる民間保険に加入されることをお勧めいたします。
5.労災保険の「特別加入」の対象が広がりました
- 令和3年4月1日から
- 令和3年9月1日から
一人親方等の特別加入の対象に追加
「自転車を使用して貨物運送事業を行う者」⇒ウーバーイーツの配達員など
特定作業従事者の特別加入の対象に追加
「ITフリーランス」⇒フリーランスのプログラマーやWebデザイナーなど
- 令和4年4月1日から