【まもなく開始!算定基礎について解説します!】

【まもなく開始!算定基礎について解説します!】

 はじめに

毎年、6月から7月にかけては労働保険や住民税の年度更新、算定(定時決定)などで人事担当者にとって多忙な時期になるかと思います。
今回はその中でも算定について基礎から特例までを解説していきます。

算定(定時決定)とは

被保険者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないよう年一回、原則として7月1日現在の被保険者全員について、4月、5月、6月に受けた報酬の届出を行い、その年の9月以降の標準報酬月額を決定します。決定し直された標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。
この決定を「定時決定」といい、定時決定を行うために提出する届書を「算定基礎届」といいます。
算定基礎届の提出の対象となるのは、7月1日現在の全ての被保険者および70歳以上被用者です。

ただし、以下の①~④のいずれかに該当する方は、算定基礎届の提出が不要です。
①6月1日以降に資格取得した方
②6月30日以前に退職した方
③7月改定の月額変更届を提出する方
④8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った方

社会保険の対象となる報酬

標準報酬月額の範囲に含まれるのは、賃金や手当、俸給、賞与など名称を問わず、労働の対償として労働者に支払う報酬全般です。現金だけでなく、通勤に使用する定期券や社宅、食事など、現物で支給する報酬も含まれます。

また、含まれないものとして以下のようなものがあります。

① 事業主から恩恵的に支給されるもの
② 臨時に受けるもの
③ 実費弁償的なもの
④ 保険給付として受けるもの
⑤ 年三回の賞与など

算定方法

原則、算定は4、5、6月のうち、支払基礎日数が17日以上ある月の報酬を合計し、その月数で除した額を報酬月額として算定します。
4、5、6月のうち支払基礎日数が17日未満の月がある場合は、その月を除いて算定を行います。

例:4、5、6月のうち、4月のみ支払い基礎日数が17日未満の場合、4月を除いた2か月の報酬を合計し、その月数の2で除した額が報酬月額となります。

また、産休、育休に入った場合でも4、5、6月の支払基礎日数が17日以上あり、算定基礎届提出の対象となる場合は、算定を行います。

短時間就労者の定時決定

短時間就労者の定時決定は、次の方法により行われます。
※短時間就労者とは、パートタイマー、アルバイト、契約社員、準社員、嘱託社員等の名称を問わず、正規社員より短時間の労働条件で勤務する人をいいます。

・4月、5月、6月の3カ月間のうち支払基礎日数が17日以上の月が1カ月以上ある場合

該当月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。

・4月、5月、6月の3カ月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合

3カ月のうち支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。

・4月、5月、6月の3カ月間のうち支払基礎日数がいずれも15日未満の場合

従前の標準報酬月額にて引き続き定時決定します。

特定適用事業所に勤務する短時間労働者の定時決定

短時間労働者の定時決定は4月、5月、6月のいずれも支払基礎日数が11日以上で算定することとなります。

※短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1カ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合で、次の5要件を全て満たす方が該当になります。

・週の所定労働時間が20時間以上あること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が8.8万円以上であること
・学生でないこと
・特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること(国・地方公共団体に属するすべての適用事業所を含む)

なお、厚生年金保険の被保険者数が501人未満の法人・個人の適用事業所であっても、労使合意に基づき申出をした場合は、任意特定適用事業所となります。

保険者算定

保険者算定とは、通常の算定では報酬月額の定時改定が難しい、又は、算定結果が著しく不当になってしまう場合、特別な方法によって行う算定です。

保険者算定は次の場合に行います。

算定が困難な場合

・4、5、6月ともに、支払い基礎日数が17日未満の場合
・病欠などにより4、5、6月の間報酬を全く受けない場合
・育児、介護休業により4、5、6月の間報酬を全く受けない場合

上記の場合は、いずれも従前の標準報酬月額で決定されます。

著しく不当な場合

・給与が遅配となった場合
3月以前に支給されるべき給与を4、5、6月で支払う場合や、4、5、6月に支払われるべき給与を7月以降に支払う場合は遅配となった分を除いて算定されます。

・遡り昇給があった場合
3月以前に昇給があり、その差額を4、5、6月で支払う場合は、昇給差額分を除いて算定されます。

・4、5、6月のいずれかに、低額の休職給を受けた場合
低額の休職給を受けた月を除いて算定されます。3か月とも休職給を受けている場合は、従前の標準報酬月額で決定されます。

・4、5、6月のいずれかに、ストライキによる賃金カットがあった場合
2か月以上賃金カットされた月がある場合は、賃金カットされた月を除いて算定されます。3か月とも休職給を受けている場合は、従前の標準報酬月額で決定されます。

・給与計算の締め日に変更があり、支払基礎日数が増加した場合
超過分の報酬を除いて算定されます。
例:4月より毎月20日締めから末日締めになる場合、4月(変更月)のみ3/21~4/30が計算期間となるため、超過した分(3/21~3/31分)を除いて算定することとなります。

・4、5、6月の報酬月額を元に算出した標準報酬月額が、過去1年の月平均報酬月額によって算定された標準報酬月額と2等級以上差があり、その差が例年発生することが見込まれる場合
申し出により、過去1年間の月平均報酬額によって算定がされます。

・月途中入社等により、一か月分の給与の支払いが満額でなかった場合

算定対象期間(4月、5月、6月)から、その月を除いて報酬月額を算出します。

年4回以上の賞与の支払いがある場合

前述の説明通り、支給回数が年3回以下の賞与は社会保険の報酬とはなりませんが、支給回数が年4回以上の賞与は社会保険の報酬となり算定時の集計に含める必要があります。
集計方法は、昨年度の7/1から今年度の6/30までに支払われた年4回以上の賞与額を合計し12で除した額を各月(4、5、6月)に計上して算定を行います。

コロナの特例改定

コロナ特例改定とは、新型コロナウィルス感染症の影響による休業により、報酬が著しく下がった方について、通常報酬が下がってから4か月目に改定可能となるところ、翌月から改定可能といった特例です。

対象者の要件は以下になります。

① 新型コロナウィルス感染症による休業により、著しく報酬が下がった月が発生している
② 著しく報酬が下がった月に支払われた報酬の総額が、現在の標準報酬月額と比べて2等級以上下がっている
③ 上記の特例による改定内容を本人が書面により同意している

令和4年6月現在、令和4年1月から令和4年6月までの間に上記の要件に該当する場合、届出によって特例改定を行うことができます。
受付期間は以下の通りです。

・令和4年1月から令和4年3月に報酬が下がった月がある場合
→令和4年1月24日から令和4年5月31日まで

・令和4年4月から令和4年6月に報酬が下がった月がある場合
→令和4年4月25日から令和4年8月31日まで

まとめ

算定は被保険者の標準報酬月額を見直す大事な業務です。集計方法を誤ると被保険者にとって不利益になってしまう可能性もあるため、集計方法などをしっかり確認し正確に集計ができるようにしましょう。

筆者紹介

 社会保険労務士法人 HALZhttps://halz.co.jp/
「外部人事部」をコンセプトに幅広い人事領域をサポートする社労士法人です。企業人事の実務経験、社労士として数々の企業様への労務コンサル経験をもとに、実務家目線に立ち企業様をサポート。

給与計算や手続きを通じ把握した労務課題への改善提案、さらに採用支援や人事制度の導入提案も手掛け、企業人事の皆様を幅広く支援します。

記事検索

ページの先頭へ