【社労士に聞く】持病を持つ社員の対応について

【社労士に聞く】持病を持つ社員の対応について

 安全衛生・リスクマネジメントQ&A

<質問>持病を持つ社員の対応についてどのようにすればいいでしょうか

持病をもって入社したパート社員について、持病を考慮し事務作業をメインでお願いしていましたが、コロナ感染リスクから、主治医より外出を控えるようにとの指示があったため、在宅勤務とし、出社を伴わない業務へ業務内容の変更をお願いしているのですが、本人は「出社できる」と言い、応じてもらえません。また、持病が悪化しているようで業務が滞っており、他の社員への負担が増加しています。

会社としてどのように対応すべきでしょうか。

<社労士の答え>

雇用契約を結んだ段階から会社はその社員の持病に対しても安全配慮義務を負っています。これには「病気になることを防ぐ」だけでなく「病気の悪化を防ぐ」ことも含まれるため、持病の悪化防止についても配慮や対策を講じる必要があります。

安全配慮義務と業務命令

本人の言葉通り出社させ、病状が悪化した場合には、安全配慮義務を怠ったとして、会社が責任を問われることになりかねません。まずは、本人の健康状態を的確に把握するため、面談等を実施し、現在の労働条件や業務負荷が適正であるか否かの判断と、それを踏まえた上でどのような対策を講じていくべきか、産業医等へ相談してみてはいかがでしょうか。

また、今回の措置が病気治療という目的に照らして合理的で相当な内容であり、就業規則等規定に基づく業務命令であれば、社員は業務命令に従う義務があり、企業が安全配慮する上では社員も企業に対して「安全確保に協力する義務」を負いますので、健康管理上必要な措置に対し協力しなくてはなりません。業務に支障をきたしているようであれば、健康管理措置への協力が労働者の義務となります。

従って、業務命令違反として懲戒処分を科すということも考えられますが、あくまでも本人の健康への配慮である点を丁寧に説明し、理解を得ることをお勧めします。

尚、持病の悪化に伴い、正常な勤務に耐えられないと判断できる時には、退職勧奨や解雇の取り扱いも可能ではありますが、それは最終手段です。企業には安全配慮義務と同じく「解雇回避努力義務」もあるため、持病に対する配慮や休職等の手順を経た上で、それでも状況が改善しない時は、退職勧奨や解雇も有り得ると考えるのがよいでしょう。

人事の視点:従業員とのコミュニケーションや安全・健康管理のフローを構築しましょう

持病を抱える人にとって「持病のせいで仕事を失ってしまったら困ってしまう」という感覚は拭えないものだと思います。その心理作用から、会社側の配慮を受け入れなくなり無理をし病気を悪化させてしまっては元も子もありません。

従業員と会社の双方の意思が意図しない方向へ進まないようにするために相互理解は不可欠です。また、2021年4月より改正高年齢者雇用安定法が施行されます。歳を重ねていくにつれ持病を抱える人は増加します。そういった状況の中での適切な対応が求められます。従業員とのコミュニケーションはもちろんのこと、産業医との連携など健康管理のフローを構築しましょう。

参考URL:治療を受けながら安心して働ける職場づくりのために(厚生労働省)

筆者紹介

 人事部サポートSR(https://o-sr.co.jp/ )

「外部人事部」をコンセプトに幅広い人事領域をサポートする社労士法人です。企業人事の実務経験、社労士として数々の企業様への労務コンサル経験をもとに、実務家目線に立ち企業様をサポート。

給与計算や手続きを通じ把握した労務課題への改善提案、さらに採用支援や人事制度の導入提案も手掛け、企業人事の皆様を幅広く支援します。

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