【社労士に聞く】確定拠出年金制度を導入すると随時改定の対象になるの?

【社労士に聞く】確定拠出年金制度を導入すると随時改定の対象になるの?

社会保険・労働保険手続きQ&A  

<質問>

選択制確定拠出年金制度の導入を考えています。正社員全員、基本給から準備金として15,000円を切り出し、その範囲内で社員各々が任意の金額を拠出するものとなっています。

例えば、制度導入時に基本給から切り分けた15,000円を拠出した場合、随時改定の対象になるのでしょうか。また、導入後に拠出額を変更した場合も再び随時改定の対象になるのでしょうか。

<回答>

確定拠出年金の導入を契機に二等級以上の変動があった場合は、随時改定の対象となります。
また、確定拠出年金制度を導入した後に拠出額を変更した場合(これまで拠出額が0円だった方が拠出するようになった場合も含む)については、随時改定の対象とはなりません。

〇選択制確定拠出年金制度とは

企業型確定拠出年金の一つで、従業員の給与を減額した上で、当該減額部分を事業主掛金として拠出するか、もしくは前払い退職金として給与等への上乗せで受け取るかを従業員が選択できる仕組みです。

老後の資産形成を従業員自らの意思に基づき、積み立てていくことが可能な制度であり、会社にとっては、新たな費用を負担することなく企業年金制度を導入できる点が魅力となっています。

〇社会保険上の報酬となるのは、給与額から各従業員が拠出をした金額を引いた分となります。

給与から切り出した事業主掛金の原資(ご質問の中の「準備金」)から拠出金を引いた差額である給与額の変動は、従業員の選択のみにより変動するものであるため、当該給与額の変動は原則随時改定には該当しないこととなっております。(平成23年4月15日 疑義照会(回答)No.2011-200)

ただし、制度の導入と同時に確定拠出年金の拠出金の拠出を開始する場合は、基本給に前払い退職金を加えた給与額は、制度導入(賃金規程改定)前の基本給より減額となるため、賃金規程の改定により降給が行われたことになります。賃金規程の改定後、拠出を開始したことにより、標準報酬月額の2等級以上の変動があるならば、改定後の賃金規程による賃金の支給開始月を起算月とする随時改定に該当すると考えられます。
そのため、制度導入を契機に2等級以上標準報酬月額が下がる場合は随時改定の対象となります。

人事の視点:退職金制度で企業型確定拠出年金が導入されている場合、事前に説明しておきましょう

退職金制度で企業型確定拠出年金が導入されている場合、制度について事前に説明しておきましょう。

退職金制度は4つの制度に分かれています。

①退職一時金制度 ②確定給付企業年金制度 ③中小企業退職金共済 ④企業型確定拠出年金制度
その中で「企業型確定拠出年金制度」は企業が毎月積み立てはしますが、運用するのは従業員自身です。

以下の各項目について従業員に案内しておくといいでしょう。

 ①運用商品の選択は従業員自身に行っていただき運用するので、元本割れのリスクがあること
 ②社外積立なので、万一会社が倒産しても掛金は保障される
 ③自身で負担すれば掛金を上乗せすることが出来る(マッチング拠出)

 ④60歳まで解約することが出来ない。

退職の際は、転職先に同様の制度があれば移換できますが、ない場合は個人型確定拠出年金への移換手続きが必要です。退職後半年以内に移換しない場合は国民年金基金連合会へ自動移換されます。

自動移換されてしまうと、①資産の運用がされない、②管理手数料が発生する、③老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間に算入されない、ということが生じますので加入時に知らせておきましょう。

筆者紹介

 社会保険労務士法人 HALZ(https://halz.co.jp/
「外部人事部」をコンセプトに幅広い人事領域をサポートする社労士法人です。企業人事の実務経験、社労士として数々の企業様への労務コンサル経験をもとに、実務家目線に立ち企業様をサポート。給与計算や手続きを通じ把握した労務課題への改善提案、さらに採用支援や人事制度の導入提案も手掛け、企業人事の皆様を幅広く支援します。

記事検索

ページの先頭へ