コンピテンシーとは? 成果を出す人の行動特性を活かそう
コンピテンシーとは?
人事評価制度の運用や構築に携わる人であれば、誰もが一度はコンピテンシーという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。コンピテンシーとは「成果を出す人の行動特性」と定義されています。成果を出す人が、どんな行動習慣を持っているのかを表しており、それを習得することで誰もが成果を出す人材になれるという考え方です。
ただ、コンピテンシーの理解について曖昧なケースが多く、多くの企業でコンピテンシーを活かしきれていないように感じます。そこで今回はコンピテンシーについて一緒に考えていきたいと思います。ぜひご参考にしてください。
成果主義評価とコンピテンシー評価
日本は長年、年功序列という特殊な人事評価制度を運用していましたが、バブル崩壊を皮切りに変化が始まりました。それが成果主義の採用です。成果主義は、社員それぞれが自分の成果を上げることにこだわるという点では、一定の効果を発揮しました。しかし、これが日本の特徴とされた仲間と助け合うという企業風土に支障をきたし、成果主義に陰りも見え始めたのも事実です。
そこで注目され始めたものが、成果そのものに注目する評価方法ではなく、成果を出すための行動習慣が備わっているか否かに注目する評価方法です。これが、コンピテンシー評価です。
コンピテンシーは、成果そのものではなく、成果を出すために必要な行動習慣に注目しています。確かにこれまでの成果主義では、成果という結果がすべてでした。しかしそれでは、成果を出すか出さないかは「その人次第」になってしまいます。狙って成果を出せる人材を育てるには、成果を出すために必要な行動習慣を定義することが重要なのです。
なぜ同じことを教えているのに、成果が出る人と出ない人がいるのか?
あなたは、スタッフに仕事を教えたときに、教わったことをしっかりと出来る人と出来ない人がいるという経験をしたことはないでしょうか。しかも、同じ内容を伝えているにも関わらず、なぜか差が出てしまうのです。この原因は何なのでしょう。過去の経験や、その人の物覚えの良し悪しに起因するものでしょうか。確かに、それも原因の1つだと思います。ただ、原因をそれだけに限定してしまっては、人の成長も、出せる成果もその人次第、人依存になってしまいそうです。狙って人を育て、組織力を高め業績を拡大するには、なるべく「その人次第」という要素を減らすべきではないでしょうか。
ではどうするのか、それがコンピテンシーです。コンピテンシーの違いで、同じこと教わったとしても成果が変わります。「その人次第」は、その人によって備わっているコンピテンシーが違うことが原因の1つです。つまり、人材育成のもどかしさ「その人次第」は、コンピテンシーによって解消へと向かうと言っても過言ではないのです。
コンピテンシーがある世界とない世界
ここで、コンピテンシーの大切さを理解する意味でも、コンピテンシーがある世界とない世界について比較してみたいと思います。
コンピテンシーに基づいた教育の事例
ここで、行動習慣の大切さが良くわかる例をご紹介します。
ある企業で営業研修をしました。その内容は、営業のロールプレイングをし、実施後、講師から受講生に対して話し方や提案内容についてフィードバックをするというものでした。この時の受講者は2人、営業経験や現状の知識・スキルレベルは同等でした。何回か同様の研修を行った結果、1人は優秀な営業マンに、もう1人は契約もなかなか取れず、最終的にはその会社を辞めるという結果になりました。
この2人の違いは何だったのでしょうか。
それは、研修の後にありました。「トレーニング」の行動習慣と「素直さ」と行動習慣に違いがあったのです。優秀な営業マンになった人は、研修の後に学んだことを素直に受け入れ自分を軌道修正することを、進んで実行しました。また、学んだことを身に着けるために何度も何度もトレーニングを繰り返していたのです。もう1人の方は、自分の考えや自分のやり方を最後まで拭い去ることが出来ませんでした。さらに、研修でやったことをその場で理解したつもりでトレーニングをすることもなかったのです。この2人に差が出ることは明白でした。これを「その人次第」と一言でまとめることも出来ますが、「デキる」人を狙って育てるためには、正しい行動習慣を身に着けさせることも重要な教育なのだということを考えさせられる事例だと思います。
まとめ
本日は、コンピテンシーについて、考えてきました。
一般的にコンピテンシーは、優秀な人から「どのような思考で、どのような行動に気を心掛けているか」を丁寧にヒアリングし、共通点を探り定義するという方法をとっています。なかなか骨の折れる作業のため、専門家に依頼するケースが多いようです。
コンピテンシーの構築を自社で実施するにせよ、専門家に依頼するにせよ、大切なことがあります。それは、成果を出す人がどんな行動習慣を身に着けているのかを徹底的に考えることです。出している成果だけで判断することは簡単です。しかしそれでは、成果を出せるか否かを「その人次第」にさせてしまいます。「その人次第」にNO、「デキる」人を狙って育てることが出来る会社になることにYesなのであれば、成果を出すために何が必要なのか、ここまで考える必要があるのではないでしょうか。
もし気になるスタッフ、成果を出せずにいるスタッフがあなたの会社にいるのであれば、その人の行動習慣に注目し、間違った行動習慣を軌道修正するところから始めてもいいかもしれません。成果を出している、出していないという結果だけで人を見るのではなく、結果につながる行動を定義し、それを身に着ける支援がこれからの中小企業には求められているのかもしれません。
あなたの会社では人を成果だけで見る会社でしょうか? もしくは、成果を出す過程に注目し、その過程を支援している会社でしょうか? 本日は以上となります。ご一読いただきましてありがとうございました。
<作者紹介>
株式会社ブレインマークス 今泉 勇太
コンサルティングサークル所属。中小企業の成長に必要な「人事評価・給与制度」、「経営計画の策定支援」「業績管理の仕組み化」「組織力向上による業績向上」を得意としている。多くの社長から「会社のことを真剣に考えてくれる右腕が一人増えた!」と評価が高い。
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