人が育つ人事評価制度は、評価の考え方に特徴がある

人が育つ人事評価制度は、評価の考え方に特徴がある

最近では「人事評価制度の目的は人材育成である。」という考え方が、ずいぶんと広まってきたように感じます。人事評価制度が査定ツールではなく、人材育成のツールであるという認識が広まってきたことは、とても素晴らしいことだと思います。

それと同時に、人事評価制度をどのように人材育成に活かせばいいのかが分からない、という声も多く聞くようになりました。
そこで今回は、人事評価制度を人材育成に活かす方法やコツについて一緒に考えていきたいと思います。是非ご参考にしてください。

<目次>
人材育成の型を知る
人材育成の型を人事評価制度に当てはめる
まとめ

人材育成の型を知る

人材育成の方法には型があります。人事評価制度を人材育成に活かすイメージが湧かない原因のひとつに、「人材育成の型を知らない」ということが考えられます。人材育成の型を知らないからこそ、人事評価制度を活かせずに苦しみ、部分的な評価のみに焦点をあて、本質的な成長支援に注力できずにいるのです。まずは、人材育成の型を理解するところから始めましょう。

①人の成長をPDCAに当てはめて考えてみる
人材育成の型を考えるにあたって、人の成長をPDCAに当てはめて考えてみたいと思います。そもそもPDCAとは、エドワーズ・デミングらによって提唱され、一般的には、P(Plan)D(Do)C(Check)A(Action)を繰り返して、目的実現に近づいていく手法と定義されています。これを人の成長に当てはめると以下のようになります。

・P(Plan)
なりたい姿に近づくための計画をつくり、目標を設定する

・D(Do)
計画を実行する、目標達成に向けて行動する

・C(Check)
行動の結果を評価する(計画通りに進んだか、目標が達成できたか否か)

・A(Action)
評価した結果を踏まえて、改善すべき点を見出す。
改善点を新たな目標設定に活かす。
改善点を参考に、自身の考え方や行動を軌道修正する。

以上のことから、人の成長は「P(計画)D(実行)C(評価)A(改善)を繰り返すことで、理想の人材に近づいていくこと」だと考えることができます。

②人の成長PDCAをそのまま人材育成に活かせるのか?
ここまで人の成長をPDCAに当てはめた型について考えてきましたが、実はこれをそのまま人材育成の型として考えてしまうと、落とし穴にはまってしまいます。人材育成とは人を育てることです。人が勝手に育つわけではありません。つまり人を育てるための支援が必要なのです。
実はここまで考えてきた型には、「支援」の要素が入っていないのです。そのため、そっくりそのまま当てはめると落とし穴にはまってしまうのです。

③人材育成のPDCAの「C」は「Cheer」の意味も持っている

多くの人がPDCAの「C」を「Check(チェックする、評価する)」と捉えています。確かにチェックや評価をすることも必要ですが、人からチェックや評価されることをあまり快く思わない人が多いことを考えると、これだけでは不満が募る可能性が出てきます。だからこそ「C」に秘められたもう一つの意味に注目すべきなのです。それが「Cheer(応援する、支援する)」です。これこそ、先ほど書いた人を育てるために必要な要素です。

つまり人材育成の型とは、人の成長をPDCAに当てはめた型に「応援・支援」という要素を入れたもの。すなわち「目標を設定し(P)、その達成に向けて行動し(D)、定期的に行動の成果や実態を把握し(C)、必要な軌道修正を繰り返す(A)ことで理想の姿に近づいていく。
そのサイクルを回すことと、その過程において本人の成長を応援し、支援する(C)こと」です。
これが人材育成の型:人材育成のPDCAなのです。

人材育成の型を人事評価制度に当てはめる

では、人材育成の型を人事評価制度に当てはめるとどうなるでしょうか。以下にまとめましたので参考にしてください。

人材育成の型を人事評価制度に当てはめる際も、「Cheer(応援する、支援する)」が欠かせません。

人の育成につながらない人事評価制度の多くは、目標を設定し、実行は本人任せ。
そして評価の時だけその良し悪しを判断し、判断結果を本人に伝える。という運用方法を取っています。その結果、多くの企業で評価を受ける人が、人事評価制度に対して「見定められている感じがして、嫌悪感がある」「評価の時だけ表面的なアドバイスをされても納得できない」「評価が恣意的で不公平に感じる」などの不満を持っています。

さらにこの運用方法は、極端に言えば、軌道修正をすることすらも本人任せとなっています。
なぜなら、軌道修正のきっかけともいえる上長からのフィードバックが評価時のみだからです。年に1、2回程度しか成長や軌道修正の機会がないと考えると、少ないと感じませんか? さらに言うと、評価の時すらフィードバックをしないケースもあります。
これでは成長の機会が無いに等しいと言っても過言ではありません。これを防ぐためにも、進捗の共有と軌道修正ができる機会を増やすべきなのです。

その機会こそ、「Cheer(応援する、支援する)」です。つまり、人を育てる人事評価制度は、単に目標を設定するだけでも、評価するだけでもありません。もちろん給与決定のルールとしてのみ活用するものでもありません。人事評価制度の運用を通じて、人の成長を応援するスタンスで支援することが本来の活用方法なのです。もしあなたが「C」をCheckのみと考えているのであれば、「C」に対する考え方を今一度見直してみてください。そして、あなたがスタッフを応援するスタンスで支援するために、できることは何なのか、考えてみてください。

まとめ

本日は、人事評価制度を人材育成につなげるポイントについて、考えてきました。お気づきの通り、人事評価制度は導入すれば勝手に人が育つものではありません。目標についても同様で、掲げた目標が勝手に達成されるわけではありません。これは大変もどかしいことです。

ただ語弊を恐れずに言うなら、どんなに素晴らしい制度をつくり上げたとしても、それだけでは、あなたの望む結果が「勝手に」手に入ることはありません。つくり上げた制度を活用しきる必要があります。

そして、活用しきるためには「支援・応援」が不可欠です。評価を受ける立場で考えてみましょう。単に出来・不出来をチェックされるだけの無機質な評価では、信頼関係を育むどころか、不信や不満を募らせてしまうでしょう。反対に自分がやろうとしていることを応援してくれる相手には、信頼や感謝、尊敬の気持ちすら芽生えるかもしれません。相手を応援しようとする気持ちと行動が積み重なっているからこそ、相手はそれに応えようと頑張るのではないでしょうか。その頑張りは本人の成長につながり、組織の戦力アップにつながる。こうして企業は年々強くなっていきます。

人を育て、企業を強くする人事評価制度は、応援を大切にしています。あなたの人事評価制度は「Cheer」が入っているでしょうか? 是非見つめなおしてみてください。

本日は以上となります。ご一読いただきましてありがとうございました。

<作者紹介>
株式会社ブレインマークス 今泉 勇太
コンサルティングサークル所属。中小企業の成長に必要な「人事評価・給与制度」、「経営計画の策定支援」「業績管理の仕組み化」「組織力向上による業績向上」を得意としている。多くの社長から「会社のことを真剣に考えてくれる右腕が一人増えた!」と評価が高い。
https://www.brain-marks.com/

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