多くの中小企業で人事評価制度が失敗に終わる3つの原因と成功へのヒント
働き方改革への対応や、新型コロナウィルスによるテレワークへの移行などをきっかけに、人事評価制度への注目が高まっています。
その一方で、「時間とお金をかけてつくった人事評価制度が活用されない」「社員満足を高めるためにつくった制度が社員の不満につながっている」など課題が浮き彫りになっているのも事実です。
せっかくつくった人事評価制度がうまく機能しないのは、何故なのでしょうか? 本記事では、人事評価制度が失敗に終わる3の原因と、制度を成功に導くヒントについて解説していきます。
<目次>
人事評価制度の導入を失敗させる3つの原因
人事評価制度の導入を成功させる3つのポイント
まとめ
人事評価制度の導入を失敗させる3つの原因
- 目的が査定になっている
まず確認したいことは、制度の目的です。1990年代に成果主義が注目されるようになった影響もあり、人事評価制度に「査定ツール」というイメージをもつ方がいます。また、「給与決定を合理的に行うツール」「労務リスクを回避するツール」と考えている方もいるようです。「評価」イコール「査定」という印象はまだまだ根強いと感じます。
しかし、それはその一面にすぎません。この間違った認識が人事評価制度の導入を失敗させたり、中途半端で終わる大きな要因となっています。 - 運用を意識していない
人事評価制度への注目が高まっている昨今、世の中には制度構築のための様々なフォーマットや、ノウハウが存在しています。確かに有益なものもたくさんあります。しかし、注意すべきことが1つあります。
それは、すべてのフォーマットやノウハウが「必ずしも運用を意識してつくられているとは限らない」ということです。緻密に設計され、あらゆる要素を盛り込んだ制度だとしても、複雑すぎて分かりづらかったり、修正が追い付かずに現状とかけ離れたものになってしまったりするケースは良くあります。
制度のすごさにこだわるあまり、運用を無視した制度設計になってしまう。これも人事評価制度が失敗に終わる原因となっています。 - 納得感にこだわっていない
人事評価制度の構築は専門知識が必要であり、その内容も複雑です。さらに、給与も絡んできますので、社員の人生や会社の業績に大きな影響を与えます。こうした背景から、いざ人事評価制度を構築するとなると、頭を抱えてしまう方が多いようです。そして整理がつかず、決断を迫られても不安で決めきれず、混乱に襲われてしまいます。
この時、混乱に立ち向かい、作成者が納得いくまで考え抜けるか否かが成功と失敗の分かれ道になります。徹底的に考えて得た納得感は、社内への強力な推進力となるでしょう。しかし、混乱を避けるため外注先に丸投げをしたり、できたものをしっかりと確認することなく社内に導入してしまっては、社内への推進力も弱まってしまうでしょう。あなたの納得感も導入の是非を決める大事な要素となっています。
人事評価制度の導入を成功させる3つのポイント
- 人事評価制度本来の目的を考える
繰り返しになりますが、人事評価制度イコール「査定ツール」ではありません。人は他人から評価をされることや、査定されることを嫌がります。もし人事評価制度が「嫌な査定をされる制度」という認識になってしまったら、制度を積極的に運用する人がいなくなってしまいます。
反対に、人事評価制度は自分の成長を支援してくれる制度、なりたい自分になるための後押しをしてくれる制度という認識となったらどうでしょう。きっと前向きに取り組む人、やる気を出す人が増えるはずです。人事評価制度は人を育成する仕組みです。そして、今いる人材で業績を拡大するには、人の成長が欠かせません。
つまり、人事評価制度は業績を拡大するためには必要不可欠な仕組みなのです。まとめると、人事評価制度の本来の目的は「人材育成を通じて強い組織をつくり、業績を拡大すること」なのです。あなたはこの考えについて、どう思うでしょうか。 - 社員の理解なくして運用はありえない
せっかく納得のいく制度をつくっても、その説明をないがしろにする方がいます。これは、とてももったいないことです。先に述べた通り、人事評価制度は社員が運用して初めて効果を発揮します。人が行動を起こすためには、多かれ少なかれやる意義や目的の理解が必用になります。だからこそ、しっかりと制度の目的や運用のやり方などを説明する必要があるのです。
それを怠ってしまうと、制度を構築してきた投資が水の泡になってしまいます。最後のひと手間に手を抜かないことが成功のコツなのです。
ここで、制度の意図を正しく伝えるために、制度の名前自体を変えることも効果的です。名は体を表すといいますが、人事評価制度と言われると、「一方的に評価をされる感」を拭いきれない場合があります。これを、キャリアアップ制度や社員の成長ストーリーなど制度名自体を変えて伝えるのです。ぜひ一度試してみて下さい。 - 最初から100点を目指さない
真面目で責任感が強い方ほど、最初から100点の制度づくりにこだわってしまいます。こだわることは、とても素晴らしいことです。しかし、人事評価制度については、どんなに考え抜いたとしても、運用してみないことには分からないことがあります。
評価項目は正しいのか、給与テーブルは本当にこれで平気なのか……など、考えたら止まりません。そこでオススメな考え方があります。
それは、最初から100点を目指さないということです。決して適当なものをつくることを推奨しているわけではありません。運用を通じて改善を重ね、100点を目指していきましょう、という考え方です。
制度がない状態を0点とします。すると、マイナスになる制度をつくらない限りは、たとえ30点の制度でも、制度がない状況よりは点数が高いことになります。そして、制度を年々改善していけば、毎年点数が上がっていくことになります。こうして、だんだん点数があがり、会社が良くなっていくことが、社員満足にもつながるのです。あなたは、この考え方について何を思うでしょうか?
まとめ
いかがでしょうか。本日は、なぜ多くの中小企業で人事評価制度が失敗に終わるのか? ということをテーマに失敗の原因と成功へのヒントをご紹介しました。
制度を構築していると、制度の中身やツールのつくり込みに注意が向きがちとなります。そして、運用が上手くいかない理由を制度の中身やツールに探してしまいます。
しかし、本記事にも記載のように、制度の導入が上手くいくか否かは、人事評価制度に対する考え方や向き合い方にも大きな原因があるのです。人事評価制度の構築や運用で悩まれているのであれば、一度制度対する考え方や向き合い方を見直してみてはいかがでしょうか。
本日は以上となります。ご一読いただきましてありがとうございました。
<作者紹介>
株式会社ブレインマークス 今泉 勇太
コンサルティングサークル所属。中小企業の成長に必要な「人事評価・給与制度」、「経営計画の策定支援」「業績管理の仕組み化」「組織力向上による業績向上」を得意としている。多くの社長から「会社のことを真剣に考えてくれる右腕が一人増えた!」と評価が高い。
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