新入社員の入社シーズン。サポート体制は整っていますか?
年が明け、いよいよ東京オリンピックが始まるぞ!という矢先に起きた新型コロナウィルスの感染拡大。あっという間に世界規模で広がりいつ収束するのか分からない状態の中、新入社員を迎える時期となりました。
この影響で入社式を延期・中止とする会社もあり例年に比べると控えめな門出ではありますが、新入社員たちの意気込みまで控えめなわけではありません。
新入社員の働く意欲/不安
一般社団法人日本能率協会が実施した、2019年の新入社員意識調査報告書によると「働く目的」の調査項目では
- 「自分の能力を高めること」→49.7%
- 「仕事を通じてやりがいや充実感を得ること」→42.4%、
- 「社会の役に立つこと」→37.5%
という結果になっており、新入社員が働くことに対して意欲的であることがわかります。
一方で、仕事をしていくうえでの不安についての調査もあります。以下がその結果です。
- 「上司・同僚など職場の人とうまくやっていけるか」→61.5%
- 「仕事での失敗やミス」→43.0%
- 「仕事に対する現在の自分の能力・スキル」→29.9%
このように、入社時には漠然とした不安を抱えている、ということがわかります。
皆さんも、新入社員の頃は初めての社会人生活をどう乗り越えて良いのか手探りだったのではないでしょうか?社会人の先輩としては新入社員にはビジネスマナーから教えてあげたくなりますよね。
「そんなこともできないの」は避けるべき
「電話の取次ぎ」を知らない世代
新入社員たちは上司や先輩たちの言葉にとても敏感です。
しかし新入社員に対して、「そんな事もできないの?」と言ってしまいたくなる事もあるかと思います。
例えば「電話対応」の時などです。
「NTT東西地域会社」のまとめによると、固定電話の契約数がピークだった1997年から比べると2018年の契約数はその3割程度に落ち込んでいるそうです。
つまり今は、各家庭に固定電話がない時代になっているのです。
1997年入社の社員からすれば「電話の取次ぎ」はできて当たり前の世代かもしれません。
しかし、今年の新入社員が生まれた時にはすでにPHSが出回っており、「固定電話をかけたことがない」「保留ボタンを押したことがない」という社員もいるかもしれません。
つまり「できない」のではなく、単に「知らない」のです。
会社の電話を受けるときプライベートでの電話と同様「もしもし」と新入社員が言ったとしてもそれは「ビジネスでの電話応対を知らなかった」だけですので、「そんなこともできないの」などと決して言ってはいけません。
ビジネスメールも同様
電話応対と同じように、メールもビジネスマナーが分かりづらいですよね。
手軽なチャットツールで用件のみ、あるいはスタンプのみでコミュニケーションを取ってきた世代の社員にとって、メールの硬い表現方法は一定の訓練が必要です。
最近のチャットツールは「送信取消」や「メッセージ削除」機能が充実しているため、「間違えて送信しても後で削除できる」という安心感がありますが、メールは送信してしまったら取り返しができません。送信先や添付資料の誤り、メール本文の誤字脱字などメールの送信は注意しなければならない項目がいくつもあり、ミスにつながりやすいです。
電話応対、メール送信は顧客や取引先など「相手」がいますので、お互い気持ちよく仕事をするためにも、新入社員にはしっかり研修を行いたいところです。
新入社員が学びたいと思っていること
「新入社員研修でもっとも学びたかったと思うもの」(2019年マイナビ新入社員意識調査)では、
- 1位→PCスキル
- 2位→コミュニケーション
- 3位→仕事の進め方
- 4位→ビジネスマナー
となっています。
20代の若者はPCよりスマホ操作に慣れているため、PCに苦手意識を持っている人も少なくありません。新入社員時に時間をかけてPC訓練をすることで一気に仕事の効率が上がります。また業界によっては独自のアプリケーションを利用することがあります。
マニュアルを作ることが大切
新入社員が一人で操作できるようなマニュアルは用意されていますか?かつて「先輩から口頭で教わった」という人も多いと思いますが、ぜひマニュアルを作成しましょう。
「すでに知っていることを明文化する」というのは、正直骨の折れる仕事です。それよりももっと緊急性の高いことを先に片付けてしまいたいという思いから先送りにされがちな社内マニュアルづくりですが、新入社員にマニュアル作りを任せてみませんか?
ベテラン社員が作成するマニュアルはつい手順を省略してしまいがちですが、新入社員は先入観がないため、本来の手順通りに作成できます。早く仕事も覚えますし一石二鳥ですね。
「ミスノート」作りも大切
また、ぜひおすすめしたいのが「ミスノート作り」です。
仕事に失敗やミスはつきものです。失敗やミスをしながら成長していきます。大切なのは同じ過ちを繰り返さないことです。「ミスノート」には、以下の3点を書いていきます。
- 日付
- 失敗・ミスしたこと
- 対応したこと・フォローしてもらったこと
最初は毎日記録されていくミスノートですが、次第に失敗やミスの記録が減っていきます。その代わり改善案や褒められた記録が増えていくようになります。
OJT訓練の中にこのミスノート作りを取り入れてはいかがでしょうか。最初はメンター(指導者)から一言書き添える交換日記タイプですと、ミスノートも三日坊主になりません。
ただ、失敗やミスがあったからと言って過度に責めたり謝罪を求めたりしないでください。失敗やミスが許されないとなると、チャレンジ精神も育たなくなりますし何よりも委縮してしまいます。また自身の過ちを隠蔽してしまうようになるかもしれません。
それよりも、昨日より今日、今日より明日できることが増えていたらその成長を一緒に喜びましょう。先輩たちからすればできて当然のことでも、社会に出たばかりの新入社員の皆さんからすれば初めての体験ばかりです。先輩の背中を見て仕事を盗め、という時代ではなくなりましたので、「あなたのことはちゃんと見ているからね」という思いを伝えていきましょう。
日々奮闘する姿を上司や先輩、同僚が見守ってくれていれば、多少の苦難も頑張れそうだと思いませんか?
まとめ
「この会社に入社して良かったと思うのはどんなときですか?」という前出の新入社員意識調査では、
上司・先輩に恵まれたと感じた時という回答が1位でした。また「感謝された時」より「褒めらた時」の方が嬉しく感じるというデータもあります。
上司や先輩、同僚たちから「頑張ったね。すごいね!」という言葉が新入社員たちの心を強くし、やがてこの会社の一員であることに自覚と誇りが芽生えてくるのす。そしてそう遠くない将来、会社にとってなくてはならない人材になりあなたを助けてくれる存在へと成長していくのです。
わたしたちはどんなことにも「初めの一歩」がありました。若者が踏み出したその歩みを遮ることなく自信を持って進んでいけるよう陰ひなたとなりフォローしていくのが先輩社員たちの役目ではないでしょうか。
逆境の時代の新入社員たちはきっと逞しく、そして頼もしく成長していくことでしょう。
古川天(社会保険労務士法人TENcolors http://sr-ten.com/)