新型コロナ対策の為、多くの企業で導入され始めたテレワーク。企業側が注意すべき点やその対策は?
新型コロナウィルス感染拡大防止のため不要不急の外出自粛が求められ、多くの企業ではテレワーク勤務が導入され始めました。在宅勤務をするにあたり、一定のルールを決めておくことで企業も従業員もスムーズに仕事ができるようになります。
これからテレワーク勤務を導入する企業もあると思いますので、テレワークがどういったものか改めて確認した上で労務管理上の注意点を確認していきましょう。
【この記事で分かる事】
「テレワーク」とは?課題は?
「テレワーク」とは在宅勤務だけでなく、以下の3点の働き方を指します。
1 在宅勤務:従業員の自宅で業務を行う
2 サテライトオフィス勤務:従業員が所属するメインオフィス以外に設けられたオフィスを利用する
3 モバイル勤務:ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行う
「テレ」とは「離れた」という意味がありますので、本来働くべき場所から離れて働くのがテレワークということになります。
テレワークには多くのメリットがあります。従業員側からすれば通勤時間の削減や育児・介護と仕事の両立のしやすさなどが大きな利点でしょう。企業側としても通勤費用の削減や育児・介護を理由とした離職を防止したり、遠隔地の優秀な人材を確保することもできます。
一方で課題もあります。【平成27年JILPT 情報通信機器を利用した多様な働き方の実態に関する調査】によると、
従業員側でのテレワークのデメリットは
①仕事と仕事以外の切り分けが難しい
②長時間労働になりやすい
③仕事の評価が難しい
④上司等とコミュニケーションが難しい
企業側のデメリットは
①労働時間の管理が難しい
②情報セキュリティの確保
③進捗状況などの管理が難しい
④コミュニケーションに問題あり
でした。従業員は居住空間で仕事をすることの難しさを感じ、企業側は見えないところで働く従業員たちの労務管理に悩んでいることが分かります。
テレワークを始めるにあたりどのような準備が必要か
さて、テレワークを始めるにあたり端末機器などを揃える必要があります。これらの端末機器は企業側が揃えてもよいですし、個人使用の端末の方が使い勝手がよい場合もありますので従業員側が揃えて業務で使用しても構いません。個人が所有する私物の端末を業務に使用することをBYOD(BringYourOwnDevice)といいます。
BYODを許可する場合は、万全なセキュリティ対策が求められます。テレワーク勤務時には、他の家族も使用する端末では業務を行わない、会社資料は印刷せずディスプレイを増設し資料を確認する、など独自ルールを設ける必要があります。
いずれにしてもテレワーク勤務をする場合はより厳重な情報漏洩防止の対策を講じる必要があります。
コミュニケーションツールを活用しよう
つぎにテレワーク勤務で気を付けなければならないのが社内コミュニケーションの取り方です。
グループウェアはじめ様々なコミュニケーションツールが手ごろな価格で利用できるようになりました。パソコンだけでなくスマートフォンからも手軽に利用でき便利ですが、ログインには二段階認証を取り入れるなど工夫も必要です。コミュニケーションツールに社内全員が見れるグループを作り、誰が今離席(休憩)中なのか確認できるようにしておくとよいでしょう。
備忘録やタスク管理表、TODOリストなどは可視化し、上司や同僚がすぐ進捗状況を確認できるツールを使えば、「社内にいないから分からない」ということもありません。見えないからこそ積極的に社内コミュニケーションをとれる環境づくりをしましょう。
企業が携帯電話を一人一台支給する場合勤務時間以外は電源を切れば、仕事と仕事以外の区別がつきます。個人携帯電話を業務使用する場合は、業務が終了したことを社内に宣言し、「これ以降は電話しない/電話にでない」と決めることが大事です。
携帯電話ではなく、パソコンを使って外線通話できるシステムもあります。このシステムを利用することにより端末を用意する必要はないので大幅にコストカットすることができます。またパソコンをログアウトしてしまえば電話もつながりません。
テレワーク勤務者にも労働基準法が適用される
ところで、テレワーク勤務者にも当然労働基準法が適用されます。在宅だからといって好きな時間から仕事が始められるわけではありません。原則は会社で定められている始業・終業時間どおりに勤務することになります。テレワーク勤務のため、タイムカードの打刻ができない場合は、労働時間を自己申告することになります。クラウド上で勤怠管理をできるサービスも豊富にそろっていますので、テレワーク勤務を導入するタイミングで切り替えるのも1つの方法です。
春休みまで休校となっている学校も多く、外出を控えたお子さんがお家にいるご家庭も多いことでしょう。お父さんやお母さんが家で働いている物珍しさも相まってそばに来て業務に集中できない、ということも想定しておかなければなりません。
このように業務を離れるようないわゆる「中抜け時間」は休憩時間として取り扱って良いこととなっていますので、休憩時間をフレキシブルにとれるようルール決めしましょう。
また、労働時間とプライベート時間の区切りがつけられるよう業務を行うスペースを決めることも重要です。これは気持ちの切り替えだけでなく、勤務時間中に起きた怪我や事故などが労災かどうかを判断する要素ともなります。
ただし、勤務時間中であっても一時的に家事に従事していたときの怪我や事故は労災にはあたりません。個別の判断は管轄の都道府県労働局・労働基準監督署にご相談ください。
助成金・補助金を活用しよう
テレワーク勤務制度を導入するにあたり、一定の社内ルール決めや新たな端末購入、社内ネットワークの構築、クラウド勤怠システムの導入など環境を整えるためには費用が発生します。
テレワーク勤務に関する助成金・補助金として、厚生労働省から時間外労働等改善助成金(テレワークコース、職場意識改善コース)、経済産業省からはIT導入補助金、東京都からは事業継続緊急対策(テレワーク)助成金などが発表されていますので、自社が取り組む内容に合わせて活用することをお勧めします。
ただし、助成金・補助金には予算があり、受付期間内であっても予算オーバーしたときは受付を終了してしまいますので早めに準備しましょう。
なお、助成金や補助金の申請には出勤簿、賃金台帳、労働条件通知書(雇用契約書)、就業規則などの提出を求められることが多いので、日頃の労務管理が重要になります。
会社で働く全員が気持ちよく働けるように、ちょっとした工夫と「(見えないけれど)隣の席」の同僚への細かな気遣いがテレワーク勤務を成功させる第一歩となります。
古川天(社会保険労務士法人TENcolors http://sr-ten.com/)